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「普遍的価値」を共有しうる国々 - 「自由と繁栄の弧」

2007/06/15 01:17

 

自分の読書の仕方?にはどうにもムラがあり、一冊一冊を順繰りに手にとって行くこともあれば、
同時に複数冊を抱えながらその瞬間の気分次第で、平行して読んでいくこともあります。

前者の場合は一冊読み終わってから次に移るケースが多いので、最大でも2冊を抱えてればよいのですが、
後者の場合は、衝動的に興味を持った何冊かを抱え込む羽目になることが多く、通勤カバンも結構な重さに。

ちなみに本日カバンに入っていたのは次の4冊、、重いわけですね(汗

 ・塩野七生「ローマ人の物語」スペシャル・ガイドブック
 ・自由と繁栄の弧
 ・武士道解題
 ・ギャラリーフェイク(文庫版19巻)

 閑話休題 -

で、ここ最近は後者のケースが多かったのですが、久々に一気に読みきったのがこちら。

 「自由と繁栄の弧」麻生太郎氏・著

現外務大臣の麻生太郎氏の著作となります、「自由と繁栄の弧」とはご本人が昨年から提唱されている主張で、
これと「価値の外交」を併せて、麻生ドクトリンの理念とされているのでしょうか。

これは「自由と繁栄の弧」と「価値の外交」を基軸において麻生大臣の講演・スピーチをまとめた一冊で、
話題や舞台は多岐にわたっていますが、上記2点を念頭に読み進めると、より具体的に理解できる内容となっています。

題名でもある「自由と繁栄の弧」とは、日本からみてユーラシア大陸の外縁をなぞりつつオセアニア諸国、
ASEAN諸国にインド、CLV(カンボジア、ラオス、ベトナム)に、中央アジアや中近東諸国、そしてトルコ、

V4(チェコ、ハンガリー、ポーランドスロバキア)、GUAM(グルジア、ウクライナアゼルバイジャン、モルドバ)、
CDC(ウクライナ、グルジア、リトアニアルーマニア)やEU諸国にNATO、そしてアメリカ、、

といった「普遍的価値を共有できるであろう国々をつなげたゆるやかな三日月状の弧」を示します。

「普遍的価値」とは「民主主義、自由、人権、法の支配、市場経済」のことであり、
日本にとっては文字通りに、普遍の価値観の集合体であると思います。

個人的には、主だった海洋国家群を数珠繋ぎとしているのが興味深い上に、地政学上、、
潜在的・宿命的に敵性国家であるロシアに対しての包囲網となっているのもまた、同様に面白く感じています。

なお、時系列ではなくテーマ別に収録されているためなかなかに分かり難くはありますが、
麻生大臣の中では「特定アジア」をこの「弧」の枠外に置いていることも読み取れます。

ん、麻生さんの言っている「北東アジア」は、日本と台湾なんでしょうね。

 - (台湾は)民主主義がかなり成熟しているし、経済面でも自由主義経済が浸透し、法治国家だ。
  いろんな意味で日本と価値観を共有している国だ

去年の国会かなんかで、こんな釣り糸をたらしていましたし。

 閑話休題 -

この辺りを、ここ最近の「日豪共同宣言」や「日印防衛政策対話」といった動きと相まって読み解くと、
一つの青写真が浮かび上がるのではないでしょうか、将来的なロシアとの対決を見据えた特定アジア包囲網、との。

東西文明が入り混じるトルコ、世界最大の民主主義国家であるインド、オセアニアの大国であるオーストラリア
中央アジアのキーパーソンであるモンゴル、そして、北東アジアでは日本以外で唯一の法治国家である台湾

こういった、日本にとって「普遍的価値」を共有できる、また、していかねばならない国々と、
今後どう共に歩んでいくのか、といった辺りを模索していく必要がありそうですね、なんて考えても見たり。

もちろん、今まで以上にアメリカとの協力体制も維持していく必要があるでしょう。

また、ビジネス用語である「ソートリーダー」、「ビルトインスタビライザー」といった言葉を使用されている点、
こういった身近な言葉への置換をしていたけると、よりイメージが掴みやすくなるとも感じました。

ん、自分ならばそこに「ロイヤルカスタマー」との概念を付け加えたいですけども、同じくビジネス用語。
当然、日本にとってそうなってほしいという点と、日本もそうならねばならない点の、双方からの観点での。

ちなみに同じタイミングで「とてつもない日本」という本も出版されています。
こちらは新書ですが、伝えようとしている事は同じで、ダイジェスト版に近い感じでした。

「自由と繁栄の弧」がハードカバーでとっつき難いとかであれば、こちらを手にとって見るのもよさそうで。

そうそう、「普遍的価値」はもとよりですが、その他に得心の言ったのが次の一節でした。

 - 「魚は自分で釣ってくれ」と言いますのは、自立自助、天は自ら扶くる者を扶くの精神(248頁)

「出藍の誉」とのことわざを思い出しました、「青は藍より出でて藍より青し」の方が一般的ですかね。

元は中国の故事ですが、、台湾(中華民国)に相応しい言葉でしょうか、
先日の李登輝氏の講演や「日本精神(リップンチェンシン)」といった言葉を拝見する限り。

「結果」だけではなく、その結果を出すための「手段」を援助する、文字通りの教え育んでいく教育であり、
「一緒に汗を流して頑張りましょう」という日本人の心情にも沿っている援助のやり方だと、そう、感じます。

日本人に元気と自信を示したい、そういった想いがヒシヒシと伝わってくる、そんな一冊。

カテゴリ: 本・アート  > 書評    フォルダ: 最近読んだ本

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